北海道共同募金会は、令和6年度の決算書として資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表を公開している。募金総額そのものはほぼ横ばいに見える。だが予算・前年度と突き合わせると、本体事業とは別の要因で数字が膨らみ、経常赤字が急拡大している実態が見えてくる。本記事では、この決算書を実際の数字ベースで検証する。
使途不明金で揺れる北海道共同募金会、令和6年度決算でも経常赤字拡大
共同募金収入そのものは前年度並みで、ほぼ想定どおりの着地だった。だが法人全体の収支を発生主義でとらえた事業活動計算書を見ると、様子が変わる。経常増減差額の赤字が前年度から大きく膨らんでいる。まずは全体像を押さえておく。
予算超過の主因は共同募金本体ではなかった
収入・支出とも予算を超過
資金収支計算書を見ると、収入・支出とも予算を大きく超過している。金額だけ見ると法人全体が予算を大きく逸脱したように映るが、科目別に分解すると、超過の中心は共同募金そのものではないことが分かる。
| 科目 | 予算 | 決算 | 差異 |
|---|---|---|---|
| 共同募金収入 | 6億5,735万円 | 6億6,143万円 | +408万円 |
| 共同募金以外寄付金収入 | 1億3,400万円 | 2億4,468万円 | +1億1,068万円 |
| 災害義援金収入 | 1,000万円 | 3,612万円 | +2,612万円 |
| 人件費支出 | 5,262万円 | 5,020万円 | △242万円 |
| 事業費支出 | 1億600万円 | 9,533万円 | △1,067万円 |
| 事務費支出 | 2,330万円 | 1,660万円 | △670万円 |
| 共同募金以外寄付金配分金支出 | 1億3,262万円 | 2億4,202万円 | +1億940万円 |
| 災害義援金支出 | 1,000万円 | 3,612万円 | +2,612万円 |
超過の中心は運動の外側にあった
収入を押し上げたのは「共同募金以外寄付金収入」と「災害義援金収入」の2科目で、超過分の大半を占める。支出側もこの2科目に連動して膨らんでいる。対照的に、人件費・事業費・事務費はいずれも予算を下回って執行された。
つまり、共同募金運動そのものの募金・配分は堅実に予算管理されている。法人全体の数字を動かしたのは、募金運動の外側で発生した寄付・義援金の受け入れと配分だった。この2科目が急増した個別の理由について、事業報告書に説明は見当たらない。
急拡大する経常赤字の中身
発生主義では赤字が拡大
発生主義の事業活動計算書では、収益と費用が逆方向に動いた。収益は減り、費用は増えている。この結果、サービス活動増減差額の赤字は前年度から大きく拡大した。経常増減差額・当期活動増減差額も同額の赤字で着地し、そのまま純資産を同額だけ押し下げている。
資金収支ベースでは逆方向に
興味深いのは、資金の出入りだけをとらえた資金収支計算書では逆の動きを示している点だ。事業活動資金収支差額の赤字は、予算の見込みより決算のほうがむしろ小さく収まっている。発生主義の赤字は拡大し、資金収支ベースの赤字は縮小する。2つの計算書が異なる方向を示す決算になっている。
堅実だった人件費・事業費・事務費の執行
共同募金運動の運営コストに目を移す。人件費・事業費・事務費の合計を共同募金収入で割ると2割台半ば、事業活動収入計で割ると2割弱となる。どちらの分母を使うかで数字は変わるが、いずれの科目も予算を下回って堅実に執行された。
ただし、この事業費支出の内訳は資金収支計算書上で区分されていない。募金を集めるための広報・イベント関連コストと、集めた募金を配分するための実務コストが、それぞれどの程度含まれているのかは、公開書類だけからは切り分けられない。
巨額のまま残る未交付配分金という滞留
貸借対照表の負債の部を見ると、流動負債の中で最大の項目は「未交付配分金」である。前年度末からは3割近く減少した。それでも規模は大きい。年間の配分金事業支出に匹敵し、月数に換算すると1年近くに相当する配分金が、年度末時点でまだ支払われずに残っている計算になる。
| 項目 | 当年度末 | 前年度末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 流動負債合計 | 5億4,617万円 | 7億428万円 | △1億5,810万円 |
| うち未交付配分金 | 4億6,161万円(84.5%) | 6億3,475万円(90.1%) | △1億7,313万円 |
| 負債の部合計 | 5億8,350万円 | 7億4,036万円 | △1億5,686万円 |
| 令和6年度 共同募金配分金事業支出(参考) | 5億2,391万円 | ||
負債総額が前年度から縮小した最大の要因は、この未交付配分金の減少である。配分先・配分額は決定済みでありながら、年度末時点で未払いの資金は、縮小傾向にあるとはいえ依然として年間配分額に匹敵する規模で残っている。滞留理由についての説明は、事業報告書に記載されていない。
純資産と手元資金が示す財政基盤の目減り
純資産は赤字とほぼ同額縮小
純資産の部合計は前年度末から1割強減少した。減少額は前述の当期活動増減差額の赤字とちょうど同額で、基本金の取崩しなど他の要因はない。
資産全体も1割強縮小
資産の部でも同様の動きが見える。現金預金、資産の部合計とも前年度末から2割前後縮小した。負債・純資産の両方が同時に縮小する決算であり、法人としての財政規模そのものが一年間でひと回り小さくなったことになる。
北海道函館市に寄付先を自分で選びたい場合の選択肢
赤い羽根共同募金は地域に細かく行き渡る一方で、寄付者自身が使い道を選ぶことはできない。函館市を直接応援したい場合は、返礼品つきで使い道をある程度選べる「ふるさと納税」という制度もある。返礼品は函館市の特産品や名産品が中心で、寄付額に応じて実質的な自己負担額を抑えながら地域を応援できる仕組みになっている。函館市にも、ふるさと納税を通じて選べる返礼品が複数用意されており、その一例を紹介する。
この決算が映す範囲とその後の展開
対象期間は令和7年3月末まで
ここまで見てきた数字は、令和6年4月1日から令和7年3月31日までを対象期間とする決算書に基づくものである。
使途不明金の発覚と第三者委員会
北海道共同募金会は令和8年9月、多額の使途不明金の発生について道民への「お詫び」を公式に発表した。同月、弁護士・公認会計士による第三者委員会も設置している。調査委嘱事項には、使途不明金が国税局の調査まで判明しなかった原因の調査が含まれ、調査報告書は令和9年1月末を目途に提出される予定だという。
今回取り上げた令和6年度決算書自体には、この事案についての記載はない。第三者委員会の調査結果が公表された段階で、過去の決算数値との整合性についても改めて検証する必要がある。
使途不明金事案をめぐる関連の調査記事
この事案については、本サイトでも複数の角度からすでに検証してきた。横領がなぜ6年間発覚しなかったのかという手口の面からは赤い羽根1億8,000万円横領、6年間気づかれなかった理由と助成への影響で扱っている。
事務局長の懲戒解雇や助成金交付の遅れといった続報は北海道共同募金会横領の続報。元事務局長を懲戒解雇、残り助成は時期未定にまとめた。理事・評議員による監督機能の実態については北海道共同募金会、不明金を見過ごした理事・評議員の全貌、会計監査を義務づける制度上の抜け穴については赤い羽根不明金、北海道への緊急支援は合法か 会計監査の抜け穴でそれぞれ検証している。
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