北海道共同募金会、不明金を見過ごした理事・評議員の全貌

事件・不正
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北海道共同募金会の使途不明金問題は、2026年2月の国税局査察を発端に発覚した(経緯はこちら)。当初およそ1億8000万円とされた使途不明金は、元事務局長の懲戒解雇(続報)、決算処理をめぐる不正の実態(続報)を経て、外部監査の制度的な限界が指摘される段階まで来ていた(続報)。

9月16日の会見では、外部の公認会計士による決算処理の中でさらに7000万円の使途不明金が発覚し、合計額は2億5000万円に達したことが明らかになった。9月11日に発足した第三者委員会(弁護士・公認会計士6名、日弁連ガイドライン準拠)は、原因調査に加え「なぜ2026年2月の国税局査察まで6年間発覚しなかったのか」の解明を委嘱事項に含めている。この問いに答えるには、そもそも理事・監事・評議員がどのような仕組みで選ばれ、どこまで経理を監督できる立場にあったのかを整理しておく必要がある。

社会福祉法人の理事・評議員はどう選ばれるのか

社会福祉法人には「理事会」「評議員会」「監事」という3つの機関があり、それぞれ役割が分かれている。理事会は業務執行の意思決定機関、評議員会は理事・監事の選任解任などを行う議決機関、監事は理事の職務執行を監査する機関である(社会福祉法45条の8等)。

ポイントは、理事を選ぶのは理事会自身ではなく評議員会だという点だ(同法43条1項、45条の8第2項)。理事・監事の選任・解任は評議員会の法定決議事項であり、理事会にその権限はない。

評議員会が理事を選び、理事会は評議員を選ばない

社会福祉法人における評議員会・理事会・監事の関係図評議員会理事会(理事18名)監事(2名)選任選任
社会福祉法人における評議員会・理事会・監事の関係図評議員会理事会(理事18名)監事(2名)選任選任

選任プロセスが法人内部で完結しやすい

評議員会は法人運営を外側から監督する立場だが、その評議員自身も理事会側からの推薦を経て選ばれるのが実務上の一般的な運用であり、選任のプロセス自体が法人の内部で完結しやすい構造になっている。

外部監査と内部監督は独立して機能していたか

北海道共同募金会では、外部の公認会計士による監査が毎年実施されていたにもかかわらず6年間発覚しなかった点が指摘されており(続報)、会計監査人による外部チェックと、評議員会・理事会という内部の監督機関が、それぞれ独立して機能していたのかが問われている。

理事に求められる3つの資格要件

理事会全体の構成には、次のような属性のバランスが求められる。

要件1
社会福祉事業の経営に関する識見を有する者
要件2
事業区域における福祉の実情に通じている者
要件3
財務管理等に識見を有する者(公認会計士等)
18名
北海道共同募金会の理事定員内の現員

北海道共同募金会の現況報告書(令和4年4月1日時点、社会福祉法59条に基づく公表文書)を見ると、この要件区分が実際にどう割り振られていたかが確認できる。

北海道共同募金会の理事・監事一覧

令和4年時点の現況報告書に記載された理事18名・監事2名は次の通り。役職・常勤区分・職業は同文書の記載に基づく。

氏名 役職 常勤区分 職業
森 昌弘 理事長 非常勤 会社役員
天羽 啓 業務執行理事 常勤 法人職員
福士 昭夫 その他理事 非常勤 無職
村瀬 政昭 その他理事 非常勤 無職
能代 常男 その他理事 非常勤 無職
太田 英司 その他理事 非常勤 会社役員
鈴木 捷三 その他理事 非常勤 無職
阿部 直樹 その他理事 非常勤 会社役員
小林 壽男 その他理事 非常勤 無職
山崎 輝男 その他理事 非常勤 無職
九谷田 旭 その他理事 非常勤 会社役員
横尾 逸郎 その他理事 非常勤 会社役員
大橋 俊忠 その他理事 非常勤 団体職員
坂井 信 その他理事 非常勤 団体役員
中村 陸男 その他理事 非常勤 無職
荒木 敏安 その他理事 非常勤 団体職員
守山 泰史 その他理事 非常勤 団体職員
中畑 雅幸 その他理事 非常勤 団体職員
山本 剛司 監事 ― 公認会計士
三上 恒 監事 ― 不動産賃貸業

出典:北海道共同募金会「社会福祉法人現況報告書」(令和4年4月1日現在、法人自身による公表文書)。18名中、常勤で実務執行にあたる理事は天羽氏1名のみ。他は非常勤・大半が無報酬。

評議員会を構成する評議員の一覧

評議員会を構成する評議員も、同時点で51名が公表されている。多くが「無職」「会社役員」「団体職員」などの名誉職的な属性で登録されている。

氏名 職業
加藤 久 無職
三橋 範夫 農業
片石 明廣 無職
原田 志郎 無職
岡 眞一 会社役員
卯月 ひとみ 会社役員
長谷川 清敏 教員
前田 正夫 無職
村瀬 充 会社役員
今野 千昭 無職
佐藤 雅裕 会社役員
真保 立至 無職
渡邊 敏明 無職
上田 義則 無職
成瀬 則之 自営業
中田 髙廣 無職
細川 啓二 団体職員
鈴木 賢広 会社役員
武田 正義 無職
坂田 憲正 会社役員
間島 恭一 僧侶
菊池 工 会社役員
丸山 マサル 無職
菊島 好孝 会社役員
北山 一幸 無職
中村 雅光 無職
辻本 康行 会社役員
近藤 信吉 無職
上村 昌市 会社役員
松田 俊雄 農業
村山 史 無職
椿坂 幸夫 無職
樋口 理義 団体役員
田畑 定男 無職
玉造 啓子 不動産業
小池 隆史 無職
掃部 一夫 無職
今野 雅徳 会社員
玉木 健 会社員
近江 基輝 記載なし
田巻 秀隆 記載なし
木工 明 団体職員
間瀬 達哉 会社役員
鈴木 幸雄 大学教授
中川 淳二 団体役員
太田 啓允 農業
平間 育子 団体役員
紙谷 京子 無職
梅田 絹子 会社役員
松山 直 団体役員
菱谷 雅之 団体役員

出典:同現況報告書(令和4年4月1日現在)。評議員定員51名分を全員掲載。近江基輝氏・田巻秀隆氏の2名は元資料自体に職業欄の記載がない。同姓同名の可能性があるため、個々の所属先の特定・検索は行っていない。

名誉職としての評議員会が意味すること

問われているのは選任構造の閉鎖性

この一覧が示すのは、個々の理事・評議員の資質の問題ではなく、選任構造そのものの閉鎖性である。理事を選ぶ評議員会自体が、理事会側からの推薦を経て構成される名誉職的な集まりであり、外部から独立した監督機能を期待しにくい。18名の理事のうち常勤で実務を担うのは事実上1名だけという体制を、この評議員会が承認してきたことになる。

第三者委員会が調べる役員の責任

北海道共同募金会の今回の事案で第三者委員会が調べている「役員・元役員の関与及び責任の有無」は、まさにこの構造の中で理事会・評議員会が実質的にどこまで機能していたかという問いに行き着く。9月16日の会見で示された再発防止策は、事務局長1人に集中していた経理・資金管理の業務を複数担当者で分担する体制への転換だった。

監督機関の見直しはまだ示されていない

これは実務レベルでの改善だが、その実務を承認・監督する立場にある理事会・評議員会自体の構成やチェック機能をどう見直すのかは、今のところ明らかになっていない。第三者委員会の調査結果は2027年1月末を目途にまとめられる予定で、そこでこの構造的な論点がどこまで扱われるかが注目される(これまでの経緯は連載記事で追っている)。

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