事件・不正

赤い羽根不明金、北海道への緊急支援は合法か 会計監査の抜け穴

事件・不正

赤い羽根不明金、北海道への緊急支援は合法か。会計監査の抜け穴

北海道共同募金会の約1億8,000万円使途不明金問題を受け、中央共同募金会は2026年8月26日、道内福祉団体への「緊急支援助成」を発表しました。事務局長個人の横領・偽造の疑いはこれまでも報じられてきましたが、ここでは視点を変え、法律の条文に沿って「どこまでが違法で、どこからが合法だったのか」を整理します。結論を先に言えば、道共募の会計体制そのものは法律上違法とまでは言えない可能性が高いものです。ではなぜそれが許容されてきたのか、その先の倫理的な問いを検証します。

個人の刑事責任——業務上横領・私文書偽造・詐欺に該当しうる行為の整理

何罪に該当するか

行為 該当しうる罪 根拠条文
募金の着服(2020年ごろから継続) 業務上横領罪 刑法253条
理事会未承認の議事録を偽造 私文書偽造罪・同行使罪 刑法159条・161条
偽造議事録を用いた金融機関からの借入(計1.9億円) 詐欺罪 刑法246条

手口の詳細は第1報で「業者からの一時借入」「偽議事録による金融機関借入」「自己口座への送金」の3類型として整理済みです。続報で借入額1億9,000万円という具体額が判明し、金融機関を被害者とする詐欺罪の疑いが加わりました。刑事告訴は執筆時点でなお「検討中」です。

告訴が進まない理由

業務上横領罪の成立には、業務として他人の財物を占有していた者が、その占有物を横領したという事実が必要です。会計責任者として募金を1人で管理していた立場は、まさにこの「業務上占有」の要件を満たします。刑事告訴が実現するかどうかは、募金会側が被害届・告訴状を通じて具体的な被害額と証拠を積み上げられるかにかかっており、押収された会計資料の大部分が国税局の手元にある状況では、募金会独自の立証には制約があると見られます。

組織の法的責任——理事の善管注意義務と、それが問える条件

損害賠償責任が生じる条件

社会福祉法45条の20は、役員等が任務を怠ったとき法人への損害賠償責任を定めます。ただし通常の監査手続きを踏んでいれば、直ちに責任を問えるとは限りません。続報で判明した通り、1人管理は着服開始(2020年)の10年前、2010年から続いていました。法律上「1人管理」自体を禁じる規定はなく、これが即座に法令違反となるわけではない点が、次の論点につながります。

監事監査は「していた」が、何を見ていなかったか

社会福祉法45条の18は、監事に対して理事の職務執行を監査する権限を与えています。道共募でも5回の監査自体は実施されており、「監査をしていなかった」わけではありません。問題は、その監査が期末時点の帳簿残高の確認にとどまり、期中の入出金の実態にまで踏み込めていなかった可能性がある点です。理事・監事の任務懈怠が認められれば、評議員が法人に代わって損害賠償を求める責任追及の訴えを起こす制度もありますが、実際に提起された事例が公表されているかは、現時点で確認できていません。

核心:なぜ「合法」でありえたのか——会計監査人設置義務の規模要件

設置義務のライン

社会福祉法は、事業収益30億円超または負債60億円超の「特定社会福祉法人」にのみ、公認会計士等による会計監査人監査を義務づけています。

会計監査人設置義務のライン30億円と道共募の年間寄付額の比較道共募 R7年度寄付額 6.73億円0円30億円(会計監査人設置義務のライン)

道共募のR7年度寄付額はこの基準を大きく下回ります。5回の監査で不正を見抜けなかったのは、監査の質以前に、法律が要求する監査水準がこの規模の法人に届いていなかったためと言えます。当サイトが独自集計した令和6年度の助成データでも、寄付総額とはねっと公開データベース上の助成総額の間に1億3,751万円の差があり、内訳は公開情報だけでは判別できません。透明性の観点で合わせて注視すべき点です。

「監査していた」ことと「見抜けた」ことは別

会計監査人制度は2017年の社会福祉法改正でガバナンス強化の目玉として導入されましたが、対象は事業規模の大きい法人に限定されました。それ以下の規模の法人は、理事会メンバーが兼ねる監事による監査で足りるとされています。監事は必ずしも会計の専門家とは限らず、公認会計士による外部監査とは質的に異なります。年間6億円という金額は個人の感覚では巨額ですが、法制度上は「厳格な外部監査までは不要」という規模に区分されており、この線引きの妥当性そのものが、今回の事案が突きつけている論点です。

中央共募の「緊急支援」は法的義務か、裁量か——124条の業務範囲との整合性

中央共同募金会と都道府県共同募金会の法的関係図中央共同募金会(連合会)社会福祉法124条連絡調整・広報・統計収集北海道共同募金会社会福祉法113条他の都道府県募金会計46法人

連合会としての法定業務

中央共募は社会福祉法124条の「連合会」で、法定業務は企画立案・広報・統計収集・連絡調整が中心です。個別県への財政支援は法律上の必須業務ではなく、災害準備金や「冠基金」と同様、裁量的事業に位置づけられます。今回の緊急支援も同じ裁量的事業とみられます。8月26日発表では金額・時期は示されず、「道共募を通じて事業見通しを確認し正式交付を決定する」という手続きのみが明らかです。原資が他都道府県の募金者の善意にどこまで依るのかは、外部から検証しづらい状態です。

緊急支援の原資は見えない

中央共募が保有する「災害等準備金」は、法律上も想定された災害時の即応資金として全国拠出の枠組みが整っています。しかし今回のような個別法人の不祥事による資金不足は、災害とは性質が異なり、既存の枠組みをそのまま適用できるのか、それとも別の理事会決議に基づく臨時の措置なのかは、公表資料からは判別できません。どの勘定から、どのような意思決定手続きを経て資金が拠出されるのかが明らかにされない限り、「緊急支援」という言葉の実態は見えないままです。

北海道函館市に寄付先を自分で選びたい場合の選択肢

赤い羽根共同募金は地域に細かく行き渡る一方で、寄付者自身が使い道を選ぶことはできない。函館市を直接応援したい場合は、返礼品つきで使い道をある程度選べる「ふるさと納税」という制度もある。返礼品は函館市の特産品や名産品が中心で、寄付額に応じて実質的な自己負担額を抑えながら地域を応援できる仕組みになっている。函館市にも、ふるさと納税を通じて選べる返礼品が複数用意されており、その一例を紹介する。

無添加いくら正油漬

【ふるさと納税】≪発送月指定可≫無添加 いくら 正油漬(鮭卵)選べる内容量 各100g 函館朝市 弥生水産

価格12,000円〜

楽天ふるさと納税

楽天ふるさと納税で他の返礼品も探す

法が要求しない水準に、公共性の高い事業を委ねていたことの是非

2026年6月13日中央共募が事実確認を求める声明を発表
2026年6月15日道共募が記者会見。約1億8,000万円の使途不明金を公表
2026年7月7日1億6,000万円を先行交付。中央共募は「検討中」と回答
2026年7月13日元事務局長を懲戒解雇
2026年8月18日偽造議事録による1.9億円の不正借入が判明
2026年8月26日中央共募が緊急支援助成の実施を発表

「検討中」から実施発表まで1ヶ月半以上を要しており、偽造議事録の報道が対応を後押しした可能性は否定できません。共同募金は社会福祉法113条により第一種社会福祉事業という高い公共性を認められています。しかし年間6億円規模の寄付は、法律上は監事監査のみで足りる体制に委ねられ、それが16年間の1人管理と6年間の隠蔽を可能にしました。緊急支援は目の前の福祉団体を救う措置ですが、「規模が小さければ厳格な監査は不要」という制度設計そのものの妥当性が問われずに済むなら、本質的な問題は先送りされたままです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました