赤い羽根の災害等準備金とは?積立の実態と広がる使い道の議論

基礎解説
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赤い羽根共同募金に寄せられたお金は、すべてがその年のうちに地域の団体へ配られるわけではない。一部は大規模な災害に備えて「災害等準備金」として積み立てられ、被災地で必要になったときに取り崩される。

この準備金は、はねっと公開データベース(当サイト集計)の上では、共同募金会が自分自身に「助成」した記録として現れる。一方で国の審議会では、災害以外にも準備金を使えるようにすべきだという議論が進んでいる。本記事では、準備金の仕組みを整理したうえで、助成データから見える積立の実態と、使い道をめぐる議論を確認する。

赤い羽根の災害等準備金はどんなお金か

準備金は、共同募金の中でも性格の異なるお金である。まずは制度の根拠と成り立ちを押さえておく。

募金の一部を毎年積み立てる仕組み

準備金の根拠は社会福祉法第118条にある。共同募金会は、災害救助法が適用されるような災害の発生などに備えて、寄付金の額に厚生労働省令で定める割合を掛けた額を上限に、準備金を積み立てることができる(厚生労働省資料)。千葉県共同募金会は、毎年共同募金の3%を「災害等準備金」として積み立てていると説明している(千葉県共同募金会)。

つまり、街頭や戸別で募金したお金のごく一部は、寄付した年に配られるのではなく、いつ起きるか分からない災害のために手元に残されている。寄付者から見れば「地域の福祉に使われる」と思って出したお金の一部が、将来の被災地支援に回る仕組みである。

阪神・淡路大震災を教訓に生まれた制度

内閣府の防災情報によれば、阪神・淡路大震災を教訓に、1998年から都道府県共同募金会ごとに支援資金の積み立てが始まった。その後、2000年の社会福祉法改正で全国的な「準備金制度」として法制化されている(内閣府)。共同募金は都道府県の区域内で配るのが原則だが、準備金に限っては、災害時にほかの都道府県の共同募金会へ拠出できる点が特徴だ。

制度の成り立ちから現在の議論までを年表にまとめると、次のようになる。

災害等準備金の年表。1995年阪神・淡路大震災、1998年に都道府県共同募金会ごとの積立開始、2000年に社会福祉法改正で法制化、2004年度に新潟県中越地震などへ全国で約1億5千万円を拠出、2025年12月に審議会報告書が使途拡大を提言、2026年6月に改正社会福祉法が成立、2027年4月に改正法の主な施行予定。1995阪神・淡路大震災1998県ごとに積立開始2000社会福祉法改正で法制化2004中越地震などに全国から拠出2025.12審議会報告書が使途拡大を提言2026.6改正社会福祉法成立2027.4改正法の主な施行予定
災害等準備金の年表。1995年阪神・淡路大震災、1998年に都道府県共同募金会ごとの積立開始、2000年に社会福祉法改正で法制化、2004年度に新潟県中越地震などへ全国で約1億5千万円を拠出、2025年12月に審議会報告書が使途拡大を提言、2026年6月に改正社会福祉法が成立、2027年4月に改正法の主な施行予定。1995阪神・淡路大震災1998県ごとに積立開始2000社会福祉法改正で法制化2004中越地震などに全国から拠出2025.12審議会報告書が使途拡大を提言2026.6改正社会福祉法が成立2027.4改正法の主な施行予定

内閣府、社会保障審議会福祉部会報告書、参議院、老施協デジタルの公表内容をもとに当サイト作成。2004年は年度。2027年4月は改正法の大部分の施行日で、準備金の規定は改正対象外。

助成データの中に準備金の積立が含まれている

では、実際にどれだけの準備金が積み立てられているのか。はねっとの助成データを事業名などで検索すると、準備金の積立が助成の記録として登録されていることが分かる。

約4.27億円
準備金積立として記録された額(R6)
43会
積立の記録を確認できた共同募金会(R6)
約86%
募金総額の3%に対する記録額の割合(R6)
3%
毎年の積立の目安(千葉県共同募金会の説明)

出典:はねっと公開データベース(当サイト集計)。事業名・目的・補足欄に「災害」と「準備金」を含む記録を集計。事業名が異なる島根県共同募金会の「被災地支援運動準備金積立事業」を含めて43会とした。

年度 準備金積立として記録された件数 記録額 募金総額の3% 3%に対する割合
R3 97件 約4.34億円 約5.09億円 85.4%
R4 97件 約4.46億円 約4.95億円 90.1%
R5 109件 約4.17億円 約4.82億円 86.5%
R6 69件 約4.27億円 約4.96億円 86.2%

出典:はねっと公開データベース(当サイト集計)。募金総額の3%は当サイトが保有する各年度の全国募金総額から算出した参考値。島根県共同募金会分は含まない。

準備金積立として記録された額と募金総額の3%(億円)。出典:はねっと公開データベース(当サイト集計)

記録額は毎年おおむね安定しており、募金総額の3%という目安とも近い水準にある。準備金の積立が、各地の共同募金会で毎年の決まった手続きとして行われていることがうかがえる。3%との差は、記録していない共同募金会があることや、県ごとに積み立ての基準額の取り方が異なることによるものと考えられるが、個別の理由は確認できていない。

配られないお金も「助成」として数えられている

ここで注意したいのは、積立の記録の多くが、助成先をその県の共同募金会自身とする形で登録されている点である。事業名は「災害等準備金積立」「法定災害等準備金の積立事業」などとなっており、実際にはどこかの団体へ配られたお金ではない。

R6の助成の記録全体に占める割合は次の通りである。

R6の助成総額の内訳(金額)

出典:はねっと公開データベース(当サイト集計)。助成総額は赤い羽根(地域・広域)、歳末たすけあい、NHK歳末たすけあいの合計(約137.4億円)。準備金積立は島根県共同募金会分を含まない。

はねっとの助成総額を「配られたお金の合計」として読むと、この分だけ実態より大きく見えることになる。全体から見れば数%にすぎないが、共同募金会が自らに配分する形で資金を手元に残している以上、寄付者にとってはどこまでが実際の助成かを区別できることが望ましい。

記録の仕方は共同募金会によって異なる

記録の仕方は共同募金会ごとに違いがある。多くは1件にまとめて登録しているが、鳥取県共同募金会のように市町村ごとの積立を細かく分けて登録している例もある。1会あたりの記録額は、R6で数百万円から3,000万円程度まで幅があり、募金の規模におおむね比例している。

1会あたりの積立の記録額(R6) 共同募金会の数
500万円未満 7会
500万円以上1,000万円未満 22会
1,000万円以上2,000万円未満 10会
2,000万円以上 4会

出典:はねっと公開データベース(当サイト集計)。積立の記録を確認できた43会を集計(島根県共同募金会を含む)。複数件に分けて記録している会は合算。

一方で、北海道・新潟・山梨・福岡の4道県については、今回の検索条件ではR6の積立の記録が見当たらなかった。準備金を積み立てていないという意味ではなく、別の名称で登録しているか、助成データとは別に管理している可能性がある。どの方式であっても、準備金がどこにどれだけあるのかを外から比べにくいことに変わりはない。

災害時に都道府県の枠を越えて使われる

積み立てられた準備金は、災害が起きたときに取り崩される。仕組みを図にすると次のようになる。

災害等準備金の流れ。赤い羽根共同募金の一部を各都道府県共同募金会が毎年積み立て、災害が発生すると被災地の共同募金会に拠出され、災害ボランティアセンターの立ち上げや活動費、福祉施設の支援に使われる。赤い羽根共同募金寄付金の一部各県の共同募金会毎年積み立て被災地の共同募金会県外からも拠出被災地の活動災害VC・福祉施設災害が起きると取り崩し
災害等準備金の流れ。赤い羽根共同募金の一部を各都道府県共同募金会が毎年積み立て、災害が発生すると被災地の共同募金会に拠出され、災害ボランティアセンターの立ち上げや活動費、福祉施設の支援に使われる。赤い羽根共同募金寄付金の一部各県の共同募金会毎年積み立て被災地の共同募金会県外からも拠出被災地の活動災害VC・福祉施設災害時に取り崩し

千葉県共同募金会・内閣府・厚生労働省の公表内容をもとに当サイト作成

千葉県共同募金会によれば、準備金は災害救助法が適用された被災地で、災害ボランティアセンターの立ち上げ経費やボランティアの活動費、公的な補助の対象にならない福祉施設の支援や整備に充てられる。大規模な災害では、都道府県の区域を越えて全国の共同募金会が準備金を拠出し合う。

過去の例として、内閣府は2004年度に全国で約1億5千万円が拠出され、そのうち約1億2千万円が新潟県中越地震の災害ボランティア・NPO活動に充てられたと紹介している。行政の支援が届くまでの初動や、公費では賄えない部分を民間の積立で支えるのが、準備金の本来の役割である。

準備金を災害以外にも使えるようにする議論

この災害専用のお金について、使い道を広げるべきだという議論が国の審議会で進んでいる。

社会保障審議会福祉部会が2025年12月18日にまとめた報告書は、準備金について「公的制度だけでは対応困難な社会課題への取組や地域のモデル的な取組など、一定規模の継続事業に対しても取崩が出来るよう、使途の透明性の確保や準備金不足とならないよう一定の取崩上限の目安を設定した上で、使途を拡大することが必要である」としている(社会保障審議会福祉部会報告書)。

透明性の確保と取崩の上限という条件

報告書が使い道の拡大に付けた条件は二つある。一つは使途の透明性を確保すること、もう一つは災害時に準備金が足りなくならないよう、取り崩しの上限の目安を設けることだ。背景には、孤独・孤立の深刻化などで、地域の民間による柔軟な取り組みがより求められているという問題意識がある(厚生労働省資料)。

ただし、2026年6月に成立した社会福祉法等の改正法を確認したところ、準備金を定めた第118条は改正の対象になっていない(参議院 法律案本文)。第118条は準備金を使える事情の一部を厚生労働省令に委ねているため、今後の見直しは省令などで行われる可能性があるが、具体的な動きは現時点で確認できていない。

同じ改正で撤廃される配分先の寄付募集制限

一方、同じ報告書が求めていたもう一つの見直しは、今回の改正法に盛り込まれた。共同募金の配分を受けた団体が、その後1年間は寄付金を募集できないとする第122条が削除されることになった。改正法は2026年6月19日に成立し、6月25日に公布されている。施行は一部を除き2027年4月1日と報じられているが(老施協デジタル)、第122条の削除がいつから適用されるかは確認できていない。

報告書の提言 改正法での扱い 現状
準備金の使途を災害以外の継続事業にも拡大(透明性の確保と取崩上限の目安を条件に) 第118条は改正対象外 省令などでの見直しの動きは確認できず
配分を受けた団体への寄付募集制限の撤廃 第122条・第123条を削除 2026年6月成立・公布(第122条削除の施行日は未確認)

出典:社会保障審議会福祉部会報告書(2025年12月18日)、参議院 法律案本文(社会福祉法の一部改正)をもとに当サイト整理

配分先の寄付集めが自由になれば、共同募金に頼らずに資金を集める団体も増える可能性がある。準備金の使い道が広がるかどうかと合わせて、共同募金の役割そのものが変わりつつある局面といえる。

積み立てたお金の残高は見えにくい

使い道を広げるのであれば、前提として準備金がいまどれだけあるのかが分かっていなければならない。ところが、毎年の積立額ははねっとの記録からおおよそ推定できる一方、いつ、どの災害に、いくら取り崩したのか、そして現在の残高がいくらなのかを、共同募金会をまたいで一覧できる公開資料は確認できなかった。

報告書が使途拡大の条件に「透明性の確保」を挙げているのは、この点と無関係ではないだろう。積み立てのお金が寄付者の善意から出ている以上、残高と取り崩しの実績を分かりやすく示すことは、使い道を広げる議論の出発点になるはずである。

赤い羽根の募金がどこに残り、どこに届くのか

赤い羽根に寄付したお金の一部は、災害に備えて毎年積み立てられ、その積立は助成データの中にも「共同募金会自身への助成」として記録されている。災害時には県の枠を越えて被災地を支える一方、平時の社会課題にも使えるようにする議論が進んでおり、その前提となる残高の見える化はまだ十分とはいえない。

各都道府県で共同募金がどの団体にいくら配分され、そのうちどれだけが準備金の積立に充てられているかは、当サイトの都道府県別の助成先データで確認できる。寄付したお金がどこに残り、どこに届いているのかを確かめる手がかりにしてほしい。

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