データ・独自分析

赤い羽根募金の17%は確認できない。はねっとデータで見る都道府県別の透明性格差

データ・独自分析

赤い羽根共同募金は「じぶんの町を良くするしくみ。」というキャッチコピーを掲げる。しかし、集められた寄付金のうち助成先が公開されているのは全体の何割なのか——当サイトが令和6年度(2024年度)のデータを独自に集計したところ、全国の共同募金会が公開する公式募金総額に対し、助成先データベース「はねっと」に掲載されている助成総額は約83%にとどまることが分かった。残り約17%、金額にして約283億円分の助成先は、はねっと上では確認できない。

赤い羽根募金の17%は確認できない。はねっとデータで見る都道府県別の透明性格差

本記事の分析は以下の2つのデータを照合した。

① 公式募金総額:各都道府県共同募金会が公表している令和6年度の募金実績額。赤い羽根の公式PDFをもとに当サイトが独自に収集・集計したものだ。

② はねっと掲載助成総額:赤い羽根共同募金が運営する助成先公開データベース「はねっと」に掲載されている令和6年度の助成金額の合計。当サイトが独自に集計した(データ出典:はねっと公開データベース)。

この2つの数値を都道府県別に比較した。ただし、差額の解釈には注意が必要だ。公式募金総額から助成総額を単純に引いた数値は以下のような複数の要因を含んでいる。

  • 募金活動費・事務費(人件費、印刷費など)
  • 災害等準備金(積立金)
  • 広域拠出金(他都道府県や全国への拠出)
  • NHK歳末たすけあい分など別途管理される資金
  • はねっとへの入力漏れや未登録の助成

つまり「見えない283億円」のすべてが隠蔽や不正というわけではない。しかし一方で、都道府県間に大きな格差があるという事実は、入力漏れや登録方針の違いが存在することを示唆している。本記事ではこの構造的な問題を整理する。

全国合計でみる、はねっと未掲載分の規模

令和6年度の全国集計は以下の通りだ。


出典:赤い羽根共同募金公式PDF・はねっと公開データベース(当サイト集計)

金額
全国公式募金総額 約1,652億円
はねっと掲載助成総額 約1,369億円
差額(未掲載分) 約283億円(17.1%)

1,652億円のうち1,369億円ははねっとで確認できる。しかし残り283億円については、どの団体にいくら助成されたかを一般の寄付者が確認する手段がない。

なお、はねっとに掲載されていない助成先の問題については、当サイトの別記事でも詳しく取り上げている。本記事はその数値的な裏付けとして読んでもらえると理解が深まる。

都道府県別の公開率にみる格差

都道府県別に見ると、公開率(はねっと掲載額÷公式募金総額)には大きな格差がある。


赤:70%未満、オレンジ:70〜80%、黄:80〜85%、緑:85%以上 出典:当サイト集計

最も公開率が低いのは滋賀県(60.2%)で、公式総額約20.7億円に対してはねっと掲載額は約12.5億円にとどまる。4割近くが見えない状態だ。次いで徳島(68.8%)和歌山(69.2%)福井(70.5%)宮崎(71.3%)と続く。

一方、最も公開率が高いのは新潟(91.5%)で、約43.7億円のうち約40億円がはねっとで確認できる。埼玉(90.8%)兵庫(90.8%)東京(89.3%)千葉(89.1%)と大都市圏が上位に並ぶ傾向がある。

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公開率が低い都道府県——何が起きているのか

公開率が低い都道府県のデータを詳しく見ると、いくつかのパターンが見えてくる。

都道府県 公式総額 はねっと 差額 公開率
滋賀 20.7億円 12.5億円 ▲8.3億円 60.2%
徳島 12.7億円 8.7億円 ▲4.0億円 68.8%
和歌山 13.9億円 9.6億円 ▲4.3億円 69.2%
福井 16.8億円 11.9億円 ▲5.0億円 70.5%
宮崎 14.8億円 10.6億円 ▲4.3億円 71.3%

これらの都道府県では、単純計算で募金総額の3割前後がはねっとに登録されていない。考えられる理由は複数ある。

① 事務費・準備金の占める割合が高い どの都道府県も募金総額から事務費・準備金等を差し引いた残りを助成に回す。差し引き率が高い都道府県ほど公開率は低くなる。

② NHK歳末たすけあい分の扱い NHKと共催する歳末たすけあい募金は共同募金の一部だが、はねっとへの登録方針が都道府県によって異なる可能性がある。

③ はねっとへの入力が不完全 助成は行っているがはねっとへの登録が追いついていない、あるいは登録しない方針の案件がある可能性だ。これは「入力漏れ」とも「意図的な非公開」とも解釈できる。

どの要因がどの程度影響しているかは、各共同募金会の会計報告書を詳細に確認しなければ分からない。しかし寄付者の立場から言えば、理由が何であれ「3割分の使途が確認できない」という事実は変わらない。

公開率が高い都道府県——何が違うのか

都道府県 公式総額 はねっと 差額 公開率
新潟 43.7億円 40.0億円 ▲3.7億円 91.5%
埼玉 78.1億円 70.9億円 ▲7.2億円 90.8%
兵庫 56.7億円 51.5億円 ▲5.2億円 90.8%
東京 103.8億円 92.7億円 ▲11.1億円 89.3%
千葉 55.5億円 49.4億円 ▲6.1億円 89.1%

公開率が高い都道府県は大都市圏・人口の多い県が中心だ。募金総額が大きいほど、はねっとへの入力体制が整備されやすいという構造があるかもしれない。また大都市圏は情報公開に対する住民の関心が高く、透明性へのプレッシャーが働きやすい可能性もある。

ただし公開率が高い都道府県でも差額は存在する。東京では約11億円、埼玉では約7億円がはねっとに掲載されていない。大都市圏では事務費・準備金の絶対額も大きいため、差額の金額自体は小さくない。

「見えない差額」の正体を探る

差額の正体を整理すると、以下の要因が考えられる。

① 事務費・人件費(確実に含まれる) 共同募金会の職員の人件費、事務所の賃料、印刷費、システム費用などは助成には回らない。一般的に募金総額の10〜15%が事務費とされているが、都道府県によって差がある。

② 災害等準備金(確実に含まれる) 大規模災害時に備えた積立金。社会福祉法の規定により一定額の積立が求められており、はねっとには登録されない。

③ 広域拠出・中央拠出(一部含まれる) 各都道府県共同募金会から中央共同募金会や他都道府県への拠出金。広域的な課題解決のために使われるが、はねっとへの登録方針は不明だ。

④ NHK歳末たすけあい分(扱いが不明) NHKと共催する歳末たすけあい募金は共同募金の一部として扱われるが、はねっとへの登録がどこまで行われているかは都道府県によって異なる可能性がある。

⑤ はねっとへの入力漏れ・未登録(可能性として排除できない) 助成は行ったがはねっとへの登録が追いついていない、または登録しない方針の案件が存在する可能性だ。都道府県間の公開率格差(60%〜91%)がこの要因の存在を示唆している。事務費・準備金の比率が都道府県によって大きく変わるとは考えにくく、格差の一因にははねっとへの登録方針の違いがあると見るのが自然だ。

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寄付者から見た問題——「使途不明」ではなく「確認不能」

ここで重要なのは、差額のすべてが「不正」や「使途不明」を意味するわけではないという点だ。事務費や準備金は必要なコストであり、それ自体は問題ではない。

問題は「確認不能」であることだ。寄付者が「自分の寄付がどこに行ったか」を確認しようとした場合、はねっとで確認できるのは最大でも91%(新潟)、最低では60%(滋賀)にとどまる。残りについては、事務費なのか準備金なのかさえ、一般の寄付者には分からない。

各都道府県共同募金会は年次報告書を公表しており、事務費・準備金・助成額の内訳は確認できる場合がある。しかし報告書のフォーマットは都道府県によって異なり、はねっとのように統一された形式で全国を比較できるわけではない。

「じぶんの町を良くするしくみ。」というキャッチコピーの下、毎年約1,652億円が集められている。そのうち約17%の使途を寄付者が確認できない現状は、共同募金が本来掲げる「透明性」とは相容れない。

透明性格差が示す今後の課題

  • 令和6年度、全国の共同募金公式総額約1,652億円に対し、はねっと掲載総額は約1,369億円(82.9%)
  • 約283億円(17.1%)がはねっとで確認できない
  • 都道府県別の公開率は滋賀60.2%から新潟91.5%まで大きな格差がある
  • 差額の内訳は事務費・準備金・広域拠出が確実に含まれるが、はねっとへの入力漏れの可能性も排除できない
  • 差額のすべてが不正ではないが、「確認不能」という事実自体が透明性の問題を示している
  • 都道府県間の格差は、はねっとへの登録方針の違いが一因と考えられる

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