あなたの休眠口座は赤い羽根に届くのか?休眠預金活用制度の仕組み
10年以上取引のない預金は「休眠預金」となり、民間団体が行う社会課題の解決に使われる。2019年度に始まったこの制度では、赤い羽根共同募金を運営する中央共同募金会も、休眠預金を実際の活動団体へ配る「資金分配団体」を務めていた。
では、眠ったままの口座のお金は赤い羽根に届いているのか。結論から言えば、接点はあったがごく一部で、休眠預金の大半は共同募金とは別のルートで動いている。本記事では、内閣府やJANPIA、中央共同募金会の公表資料をもとに、休眠預金の流れと中央共同募金会が実際に配った金額を整理し、共同募金との違いを確認する。
休眠預金はどこを通って誰に届くのか
まずは制度の基本的な条件を押さえておく。
休眠預金になるのはどんな口座か
制度の主な条件を数字で整理すると、次のようになる。
出典:JANPIA「休眠預金等活用制度について」
休眠預金等活用法に基づき、2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の取引がない預金が休眠預金として扱われる。口座の存在を忘れて放置していれば、本人が気づかないうちに対象になっている可能性がある。
預金保険機構から実行団体までの経路
休眠預金は、金融機関を離れたあといくつかの団体を経由して現場に届く。
JANPIA「休眠預金等活用制度について」をもとに当サイト作成
休眠預金はまず各金融機関から預金保険機構に移され、その一部が日本民間公益活動連携機構(JANPIA)に交付される。JANPIAは2018年7月に設立され、2019年1月に国から「指定活用団体」に指定された団体で、制度全体の管理・監督を担う。
JANPIAはNPOに直接資金を配るわけではない。間に「資金分配団体」と呼ばれる中間支援組織が入り、自ら事業を設計したうえで、現場で活動する「実行団体」を公募で選ぶ。資金分配団体もJANPIAの公募で選ばれる立場であり、公募が二段階で行われる構造になっている。
年1,600億円規模に増えた休眠預金
休眠預金として金融機関から預金保険機構に移される額は、毎年増え続けている。内閣府の資料によると、2024年度の移管額は1,695億円で、赤い羽根共同募金の全国の年間募金額(約165億円)の10倍を超える。
一方で、本人や家族が気づいて払い戻しを受ける額も増えており、2024年度は523億円にのぼった。2019年度から2025年度までに、休眠預金を財源とする助成は総額約401億円、資金分配団体は延べ373団体、実行団体は1,550団体に広がっている。2023年の法改正では、助成に加えて出資による支援や、活動を支える「活動支援団体」の仕組みも新たに設けられた。
使い道は優先3分野に絞られている
活用先として優先されているのは、子どもや若者への支援、生活を営むうえで困難を抱える人への支援、地域活性化への支援の3分野だ。国や自治体だけでは対応が難しい社会課題を、民間の活動で解決することが制度の目的とされている。
休眠預金は寄付ではない
ここまでの流れを見ると、自分の預金が知らないうちに寄付されたように感じるかもしれない。しかし、休眠預金と寄付は性質がまったく異なる。
払い戻しはいつでも可能
JANPIAは、休眠預金はいつでも払い戻しができると明記している。政府広報オンラインによれば、手続きは取引のあった金融機関で行い、通帳や取引印、本人確認書類などを持参する。休眠預金になっても、預金そのものが消えるわけではない。
預金者の意思を介さずに動くお金
一方で、払い戻しの請求がない限り、そのお金は預金者の意思とは無関係に公益活動の資金として動く。どの団体のどの活動に使われるかを、預金者が選ぶことはできない。寄付先を自分で選び、使い道を確かめたうえで託す寄付とは、この点で決定的に違う。
中央共同募金会が休眠預金の配り手を務めた事業
では、赤い羽根の側は休眠預金にどう関わったのか。中央共同募金会は、2019年度に資金分配団体として採択され、2019年度から2022年度まで2つの助成プログラムを実施した。
2つの事業と実際の助成額
中央共同募金会の年次報告書には、実行団体への助成額が年度ごとに載っている。
| 事業名 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 当事者会のピアサポート支援事業(草の根活動支援事業) | 2,905万3,237円 | 1,621万1,067円 | 2,094万5,585円 | 約6,621万円 |
| 災害時要支援者緊急支援事業(災害支援事業) | 0円 | 65万9,349円 | 27万4,568円 | 約93万円 |
出典:中央共同募金会 令和2〜4年度 年次報告書。災害時要支援者緊急支援事業は、2020年度は災害時の助成実績がなかった。
2つの事業を合わせて、3年間で実行団体に助成したのは約6,700万円だった。ほとんどがピアサポート支援事業によるもので、災害時の事業は大きな災害が起きたときにだけ使われる仕組みのため、実績は少額にとどまった。
助成先の実行団体
当事者会のピアサポート支援事業は、引きこもりや認知症、DV被害など、生きづらさを抱える人たちの当事者会・家族会の活動を支える事業だ。実行団体は、KHJ全国ひきこもり家族会連合会、女性ネットSaya-Saya、認知症の人と家族の会の3団体で、ピアサポーターの養成研修や、本人・家族のネットワークづくりなどに使われた。中央共同募金会は、それ以前から「赤い羽根福祉基金」で当事者会に助成しており、その経験を休眠預金の事業につなげた形になる。
災害時要支援者緊急支援事業は、日本自閉症協会、ゆめ風基金など、障害のある人や災害時に配慮が必要な人の支援団体・当事者団体を実行団体とした。2021年度は全日本ろうあ連盟への助成が行われ、令和3年8月豪雨の被災地で、避難や支援の状況を聞き取る活動に使われた。
数ある資金分配団体の一つにすぎない
ただし、中央共同募金会が休眠預金の窓口だったわけではない。JANPIAが2019年度に選んだ資金分配団体は22団体24事業、助成総額は約29.8億円で、中央共同募金会はその中の1団体だった。制度全体の助成総額約401億円と比べると、中央共同募金会を通じた約6,700万円は0.2%にも満たない。中央共同募金会の年次報告書の記載も、2022年度までの実施にとどまっている。
共同募金と休眠預金は別の財布で動いている
同じ「赤い羽根」が関わった時期があっても、共同募金と休眠預金ではお金の出どころから助成先の決め方まで異なる。
| 項目 | 赤い羽根共同募金 | 休眠預金 |
|---|---|---|
| お金の出どころ | 個人・法人からの寄付 | 10年以上取引のない預金 |
| 出し手の意思 | 寄付の意思を持って募金する | 預金者の意思は介さない(いつでも払い戻し可) |
| 根拠法 | 社会福祉法 | 休眠預金等活用法 |
| 助成先の決め方 | 都道府県共同募金会が配分委員会の承認を得て配分 | JANPIAが資金分配団体を、資金分配団体が実行団体をそれぞれ公募で選定 |
| 助成先を調べる場所 | はねっと(赤い羽根の公開データベース) | JANPIAの公募結果など |
中央共同募金会・JANPIAの公表資料をもとに当サイト整理
はねっとのデータに休眠預金の助成は見当たらない
はねっと公開データベース(当サイト集計)で、財源区分・事業名・助成目的・補足欄に「休眠」を含む助成を検索したところ、該当は0件だった。中央共同募金会が資金分配団体を務めた事業であっても、その資金は共同募金の配分としては記録されていない。休眠預金が共同募金とは別の財布で動いていることが、データの上でも確認できる。
情報公開の入口が分かれている
休眠預金の側では、JANPIAが資金分配団体の採択結果に加え、採択に至らなかった申請団体の一覧まで公開している。共同募金ははねっとで助成先と金額を確認できる。どちらも情報は公開されているが、入口が分かれているため、お金の流れを一続きで追うのは容易ではない。
休眠口座の行き先は自分で選べる
「休眠口座は赤い羽根に届くのか」という問いへの答えは、「届いた時期はあったがごく一部で、しかも預金者が選んだ行き先ではない」となる。放置されたお金を社会課題の解決に回す制度には意義があるが、使い道を預金者自身が決めることはできない。
自分のお金で誰かを支えたいなら、使っていない口座を確認して払い戻しを受け、応援したい先を自分で選ぶという方法もある。赤い羽根共同募金の助成がどこにいくら届いているかは、はねっとで確認できる。
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