赤い羽根共同募金のポスターやのぼりでよく見る「ご協力ありがとうございます」という言葉。その大半は、実は街頭でもネットでもなく、自治会・町内会の役員が各世帯を一軒ずつ回って集める「戸別募金」によるものだ。募金全体の実に7割前後を、この戸別募金が占めている。本記事では、戸別募金という集め方の実態と、近年の変化を整理する。
赤い羽根の主力は「戸別募金」。町内会経由の集金の実態とその変化
戸別募金とは、募金ボランティア(多くは自治会・町内会の役員)が各家庭を訪問し、世帯ごとに寄付をお願いする集金方法のことだ。中央共同募金会の広報資料によれば、平成30年度の全国の募金方法別内訳(総額約176億円)は、戸別52.3%、地域歳末たすけあい23.3%、NHK歳末3.2%、法人9.2%、職域3.6%、街頭1.5%となっている。歳末たすけあい分を除いた「一般募金」だけで見ると、戸別募金は7割強を占める計算になる。
この構成比は近年に限った話ではない。厚生労働省の資料では、平成18年度・平成27年度のいずれの時点でも「募金額の7割以上が戸別募金」とされており、赤い羽根創設以来、一貫して戸別募金が集金の中心であり続けてきたことがわかる。
戸別募金の比率は下がっているのか
全国集計での直近年度の構成比は検索の範囲では確認できなかったが、都道府県単位の公表資料からは、比率の低下がうかがえる例がある。岩手県共同募金会の令和6年度事業報告書では、一般募金における戸別募金の構成比は66.6%で、前年度(令和5年度)の73.5%から1年で7ポイント近く下がっている。地域歳末たすけあい募金でも、同県では78.6%(前年度79.1%)とわずかに低下している。
厚生労働省の資料も、「地域の人口減少や地縁の希薄化などを背景に戸別募金による募金は減少傾向にあり、法人募金の減少も相まって共同募金の募金額は平成7年度をピークに減少傾向が始まった」と分析しており、戸別募金の縮小が赤い羽根全体の募金総額減少の主因の一つに位置づけられている。全国的にどの程度のペースで低下しているかは、都道府県ごとの公表資料を積み上げないと正確には分からないが、少なくとも一部地域では単年度で大きく落ち込むケースがあることが確認できる。
戸別募金と「強制徴収」問題の関係
戸別募金は、自治会・町内会という地縁組織を通じて集められる。この集金構造そのものが、以前から「事実上の強制」という批判の対象になってきた。自治会費に赤い羽根募金分を上乗せして天引きする慣行は、2008年の最高裁判決で「思想信条の自由の侵害」として違法と確定しているが、その後も各地で慣行が続いている。
一方で、集め方を見直す動きも出てきている。長野県のある自治会では、従来は自治会費から一律500円を天引きしていた赤い羽根募金について、各世帯に意向調査を行ったうえで、同意しない世帯には500円を返す方式に改めた。実際に調査を行ったところ、全世帯の約3割が募金に同意しなかったという。「強制されているとは思っていなかったが、選択肢を示されて初めて断れることに気づいた」という趣旨の反応も住民から出ている。この事例は、戸別募金が実質的にどれだけ「任意」として機能していたかを測る一つの目安になる。
また東京都内のある区議会では、赤い羽根の事務局が区役所内に置かれ、区の担当課から町会・自治会へ募金活動を依頼する仕組み自体を問題視する質問が出ており、戸別徴収ではなく銀行振込や電子マネー決済など多様な寄付方法を周知するよう求める動きも出ている。
戸別募金以外の集め方との比較
| 募金方法 | 集め方 | 全国構成比の目安 |
|---|---|---|
| 戸別募金 | 自治会・町内会が各世帯を訪問 | 一般募金の7割前後 |
| 法人募金 | 企業が組織として寄付 | 約9〜11% |
| 職域募金 | 職場ごとに従業員が募金 | 約3〜4% |
| 街頭募金 | 駅前等での呼びかけ | 約1〜2% |
| 学校募金・その他 | 学校での募金、ネット募金等 | 残り数% |
出典:中央共同募金会広報資料(平成30年度)・厚生労働省資料・岩手県共同募金会事業報告書(当サイト集計)
法人募金・職域募金は、自治会を経由しない分、個人の意思確認がしやすい集め方だとされる。一方で戸別募金は、地縁組織という強い動員力を持つ反面、個々の世帯が「断りにくい」構造を内包している。この二面性が、戸別募金をめぐる評価が割れる理由になっている。
戸別募金という集め方のこれから
戸別募金は、戦後まもない時期から80年近く、赤い羽根の集金を支えてきた仕組みだ。地縁組織の動員力に頼れる一方で、断りにくさという構造的な課題を抱え続けてきたのも事実であり、その比率は地域によっては目に見えて低下し始めている。銀行振込や電子マネー決済など、戸別訪問に頼らない集め方をどこまで広げられるかが、赤い羽根の今後の集金力を左右しそうだ。

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