赤い羽根の強制徴収は不当寄附勧誘防止法違反か。政府答弁書の中身
2025年5月23日、参議院議員の浜田聡氏(NHK党)が第217回国会に質問主意書(第127号)を提出した。テーマは「赤い羽根共同募金の強制徴収が不当寄附勧誘防止法違反となる可能性」だ。石破内閣は2025年6月3日に答弁書を送付し、「共同募金会には不当寄附勧誘防止法が適用される」と明言した。本記事では質問と答弁の内容を整理し、寄付者が実際に使える権利を解説する。
不当寄附勧誘防止法とは何か
「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」(令和4年法律第105号)は、旧統一教会問題を契機として2022年12月に成立し、2023年1月から順次施行された法律だ。
同法は以下の6つの行為を禁止している。
- 寄附勧誘の際に、不安をあおる告知をすること
- 勧誘の目的を告げずに呼び止めること(いわゆるキャッチ勧誘)
- 退去を妨害すること
- 深夜・早朝に訪問や電話をすること
- 生活の維持を困難にするほどの寄附を求めること
- 家族に迷惑をかけると告げること
これらの禁止行為によって「困惑」した状態で行った寄附の意思表示は、取り消すことができる。対象は「法人等」——法人または代表者・管理人の定めがある団体——であり、宗教団体だけでなく社会福祉法人や任意団体も含む。
浜田議員が投げかけた4つの問い
浜田議員の事務所には「職場で断れない」「自治会費から勝手に天引きされている」「子どもが学校で募金を断れない」といった相談が複数寄せられていた。これを踏まえて以下の4つの問いを政府に投げかけた。
| 問 | 質問内容 |
|---|---|
| 一 | 赤い羽根の強制徴収は社会福祉法116条(自発的協力の原則)に違反しないか |
| 二 | 不当寄附勧誘防止法は共同募金会・社協等の赤い羽根集金団体に適用されるか |
| 三 | 適用される場合——禁止行為に該当するか・取消権はあるか・相談窓口は・政府は措置を取るか |
| 四 | 共同募金会が違反防止の取組をしているか政府は把握しているか |
石破内閣の答弁書——「適用される」と明言
2025年6月3日付の答弁書(内閣参質二一七第一二七号)の内容を整理する。
質問と答弁の対応
強制にわたることなく自発的な協力を基礎とすべきであることは明らかではないか
社会福祉法116条に基づき「強制にわたることなく適切に寄附金の募集が行われるべきと考えている」——実態には踏み込まず原則論のみ
「共同募金会と称する社会福祉法人については、法人等に該当するため、不当寄附勧誘防止法が適用される」と明言
「個別具体の事案に即して判断すべき」としつつ、禁止行為によって困惑させた場合は取消権が認められると認めた
全国の消費生活センター、日本司法支援センター(法テラス)の「霊感商法等対応ダイヤル」、消費者庁の情報提供フォームが窓口と回答
「網羅的に把握していない」——実態調査は行っていないと認めた
答弁で認められた3つの重要事実
答弁書で政府が認めた重要な事実は以下の3点だ。
① 共同募金会には不当寄附勧誘防止法が適用される 社会福祉法113条2項により共同募金会と称する社会福祉法人は同法の「法人等」に該当するため、適用されると明言した。自治会・社協など「赤い羽根共同募金を集金している団体」も、法人等に該当する場合は適用されるとした。旧統一教会問題を契機に作られた法律が、赤い羽根の集金活動にも適用されることが国会の場で確認された。
② 困惑させた場合は寄附の意思表示を取り消せる 禁止行為に該当する行為によって個人が「困惑」し、それによって寄附の意思表示が行われた場合、当該個人は意思表示を取り消すことができると認めた。「断れない雰囲気の中で払わされた」という状況が禁止行為による困惑に当たると判断されれば、法的に取り消せる可能性がある。
③ 相談窓口は消費生活センター・法テラス・消費者庁の3つ 強制徴収で困った場合の相談窓口として、全国の消費生活センター(消費者ホットライン:188)、日本司法支援センター(法テラス)の「霊感商法等対応ダイヤル」、消費者庁ウェブサイト上の情報提供フォームの3つを答弁書は明示している。
政府が答えなかったこと
答弁書では明確な回答を避けた部分も多い。
浜田議員が「強制徴収の実態を政府は把握しているか」と問うたのに対し、政府は「網羅的に把握していない」と答えた。毎年多額が集められる共同募金について、その集め方の実態を政府が把握していないという事実は驚くべきことだ。
また「禁止行為が確認された場合、政府は措置を取るのか」という問いに対しても、「個別具体の事案に即して判断すべき」と答えるにとどまり、具体的な基準や方針は示さなかった。
さらに「赤い羽根募集時に不当寄附勧誘防止法のパンフレットを配付すべきでは」という趣旨の指摘に対しては、中央共同募金会がボランティア向けに社会福祉法116条の趣旨等を示したパンフレットを作成し、各都道府県の共同募金会に周知していると承知している旨を答えるにとどまり、政府として何らかの措置を新たに取るとは明言しなかった。
実際に使える——取消権と相談窓口
この答弁書が確認したことを踏まえると、強制的な徴収を受けた場合に以下の対応が可能だ。
① 寄附の意思表示の取り消し 不当寄附勧誘防止法の禁止行為(退去妨害・不安をあおる告知・困惑させる行為など)によって払わされた寄附は、意思表示を取り消すことができる。取消権は、追認をすることができる時から1年間(霊感等による知見を用いた告知により困惑した場合は3年間)行使しないとき、または寄附の意思表示をした時から5年間(同じく霊感等の場合は10年間)を経過したときに、時効によって消滅する。書面または口頭で「取り消す」と伝えることで効力が生じる。
② 消費生活センター・法テラスへの相談 全国の消費生活センターに相談できる。電話番号は188(消費者ホットライン)。最寄りの消費生活センターにつながる。日本司法支援センター(法テラス)の「霊感商法等対応ダイヤル」でも、法人等による寄附の不当な勧誘に関する相談を受け付けている。「赤い羽根募金を断れずに払ってしまった」という相談も対象になる。
③ 消費者庁への情報提供 消費者庁のウェブサイトに「法人等による寄附の不当な勧誘と考えられる行為に関する情報提供フォーム」がある。個別事案の情報を提供することで、行政の対処につながる可能性がある。
強制徴収を受けたときに知っておきたいこと
- 浜田聡参議院議員が2025年5月に「赤い羽根の強制徴収は不当寄附勧誘防止法違反では」と質問主意書を提出(第217回国会第127号)
- 石破内閣は2025年6月3日の答弁書で「共同募金会には不当寄附勧誘防止法が適用される」と明言
- 禁止行為によって困惑させられた場合、寄附の意思表示を取り消せることも認めた(時効は追認可能時から1年・寄附時から5年、霊感等が絡む場合はそれぞれ3年・10年)
- 一方、政府は実態を「網羅的に把握していない」と認め、違反への対処基準も明示しなかった
- 強制徴収で困った場合の相談窓口は消費者ホットライン(188)、法テラスの霊感商法等対応ダイヤル、消費者庁の情報提供フォームの3つ

コメント