制度・問題点

赤い羽根の法的独占。社会福祉法が10月〜3月の他団体募金を禁じる理由

制度・問題点

赤い羽根の法的独占。社会福祉法が10月〜3月の他団体募金を禁じる理由

赤い羽根共同募金は「民間の自発的な募金活動」を標榜する。しかし社会福祉法第113条第3項はこう定めている——「共同募金会以外の者は、共同募金事業を行ってはならない」。法律によって他の団体の参入を禁止した、法的独占だ。毎年10月から翌3月にかけての6ヶ月間、この独占が機能する。本記事ではその仕組みと問題点を整理する。

社会福祉法が定める独占の仕組み

共同募金に関する社会福祉法の条文を確認する。

第112条(共同募金の定義)

この法律において「共同募金」とは、都道府県の区域を単位として、毎年一回、厚生労働大臣の定める期間内に限ってあまねく行う寄附金の募集であって、その区域内における地域福祉の推進を図るため、その寄附金をその区域内において社会福祉事業、更生保護事業その他の社会福祉を目的とする事業を経営する者に配分することを目的とするものをいう。

「厚生労働大臣の定める期間内に限って」という部分が重要だ。この期間は毎年10月1日から翌年3月31日までの6ヶ月間と告示で定められている。

第113条第3項(参入禁止)

共同募金会以外の者は、共同募金事業を行ってはならない。

この規定により、10月〜3月の期間中、共同募金と同じ性格の募金活動を共同募金会以外の団体が行うことは法律上禁止されている。所轄庁による指導・是正の対象になり得る規定であり、社会福祉法には罰則規定を含む章も設けられている。

「独占」とは具体的に何を意味するのか

共同募金の法的独占——10月〜3月の6ヶ月間

4月〜9月
共同募金期間外
どの団体も自由に
募金活動が可能

10月〜翌3月
共同募金期間
共同募金会のみ
同種募金を実施可能
他団体は参入禁止

根拠:社会福祉法第112条・第113条第3項

ただし「共同募金事業」の定義は社会福祉法第112条が示す要件——都道府県単位・年1回・社会福祉目的での配分——を満たすものに限られる。そのため、特定の病気の研究支援や海外の難民支援といった別目的の募金活動は制限を受けない。

問題になりうるのは、同じ福祉目的で地域に根差した活動をしているNPO・社会福祉法人・学校・自治会が独自の募金活動を10月〜3月に行う場合だ。「社会福祉を目的とする事業」への配分を目的とした地域密着型の募金であれば、共同募金との競合と見なされる可能性がある。実務上、このグレーゾーンの判断は都道府県や行政の解釈に委ねられている。

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他に類例はあるか——日本でほぼ唯一の法的独占

日本赤十字社は法律(日本赤十字社法)によって設立・運営される特殊法人だが、特定の時期に他団体の募金活動を禁止する規定はない。緑の羽根(緑化推進運動)・青い羽根(水難事故防止)・白い羽根(結核予防)なども、特定期間中の他団体参入を禁止する法律はない。

つまり赤い羽根共同募金は、日本の募金活動の中でほぼ唯一、法律によって特定期間中の同種事業への参入を禁じた特殊な地位を持っている。この法的独占は1951年の社会福祉事業法(現・社会福祉法)制定以来、70年以上維持されてきた。

独占の正当化論と批判

正当化する側の論理

法的独占が設けられた背景には、戦後の経緯がある。1947年の第1回共同募金は、戦災で疲弊した民間福祉施設を支援するため、国民が一丸となって取り組む「国民たすけあい運動」として始まった。全国一斉・期間集中・地域に使うという仕組みを機能させるには、他の募金との競合を避けて寄付者の混乱を防ぐ必要があった。

現在も「一元化による効率性」という理屈は維持されている。複数の団体がバラバラに社会福祉目的で募金を行うより、一元化することで助成先の審査・配分が効率化されるという考え方だ。

批判側の論理

しかし現代の視点から見ると、この法的独占には重大な問題がある。

第一に、民間の創意工夫や競争が排除される。もしNPOが自分たちの活動資金を秋冬の時期に地域から集めようとしても、共同募金との競合とみなされるリスクがある。寄付文化の多様化・クラウドファンディングの普及という時代状況と、70年前の法的独占は相容れなくなりつつある。

第二に、独占があるにもかかわらず情報公開が不十分という問題だ。競争がなければサービスの質向上・透明性向上への圧力が働かない。当サイトが分析したように、はねっとへの公開率は都道府県によって60%〜91%という大きな格差があり、独占的地位にある組織としての説明責任が問われる。

第三に、独占と強制徴収の相乗効果の問題だ。

独占と強制徴収の相乗効果

法的独占と自治会による実質的な強制徴収が組み合わさると、寄付者にとって「断れる選択肢がない」構造が生まれる。

通常の民間市場なら、A社の商品が気に入らなければB社の商品を選べる。しかし共同募金の場合、10月〜3月の期間中は「同種の社会福祉目的の地域募金」に参加するなら共同募金会を通じるしかない。かつその共同募金が自治会費に上乗せされて事実上強制されている——という状況では、住民に選択の余地はほとんど残らない。

2008年に最高裁が「自治会費への上乗せは思想信条の自由を侵害し無効」と確定したにもかかわらず慣行が続いているのも、この「選択肢のなさ」と無関係ではない。

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民間の独占と強制徴収が重なる構造

  • 社会福祉法第113条第3項は「共同募金会以外の者は共同募金事業を行ってはならない」と定めており、10月〜3月の6ヶ月間、共同募金会に法的独占が与えられている
  • 日本の募金活動の中でこれほど明確な法的独占を持つのは赤い羽根共同募金だけで、1951年以来70年以上維持されている
  • 独占の正当化論は「一元化による効率性」だが、民間競争の排除・透明性向上圧力の欠如という批判がある
  • 法的独占と自治会による強制徴収が組み合わさり、寄付者に選択の余地がほとんどない構造が生まれている

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