赤い羽根のクルド人助成は違法か。国会質問と政府答弁の中身
2023年11月15日、参議院議員の浜田聡氏(NHK党)が第212回国会に質問主意書(第50号)を提出した。テーマは「赤い羽根共同募金の配分先にクルド人支援のための活動拠点立ち上げ事業が含まれていることに関する質問」だ。社会福祉法第117条が定める「社会福祉以外への配分禁止」に違反しないかという問いを国会の場に持ち込んだ。岸田内閣は2023年11月28日に答弁書を送付したが、違法かどうかの判断は示さなかった。本記事では質問と答弁の内容を整理する。
社会福祉法117条とは何か
問題の核心は社会福祉法第117条第1項だ。
共同募金は、社会福祉を目的とする事業を経営する者以外の者に配分してはならない。
この規定は、赤い羽根共同募金の助成先を「社会福祉を目的とする事業を経営する者」に限定している。裏を返せば、社会福祉を目的としない事業・団体への配分は法律上禁止されているということだ。
「社会福祉を目的とする事業」の範囲は法律上明確に定義されていないが、一般的には社会福祉法第2条に列挙された社会福祉事業(高齢者・障害者・児童等の支援を目的とする事業)を指すと解釈されている。在留資格を持たない外国人への支援、クルド人という特定の民族への支援活動が「社会福祉を目的とする事業」に該当するかどうかは、解釈の余地がある問題だ。
問題視されたクルド人支援への助成
浜田議員が問題視したのは、赤い羽根の公式サイトに掲載されていた以下の助成案件だ。
| 団体名 | 事業名 | 助成額 | 年度 |
|---|---|---|---|
| クルドを知る会(埼玉) | クルド人支援のための活動拠点立ち上げ事業 | 384,693円 | 2021年 |
| 在日クルド人と共に(埼玉) | 在日クルド人との地域コミュニティづくり事業 | 1,900,000円 | 2022年 |
| NPO法人メタノイア(埼玉) | クルド人難民申請者・仮放免者への日本語教室・プレスクール | 345,295円〜 | 2023〜2025年 |
出典:赤い羽根共同募金公式サイト
特に焦点となったのは「クルドを知る会」への38万円の助成だ。同会はJR蕨駅から徒歩2分の場所に事務所を開設し、クルド人への生活相談・支援物資の提供・メディア対応などを行う団体だ。赤い羽根の助成報告書によると、この事業によってクルド人支援の拠点を立ち上げた。
浜田議員が問題とした論点は「クルド人という特定の民族集団への支援活動が、社会福祉法117条が定める『社会福祉を目的とする事業』に該当するのか」という点だ。
浜田議員の質問内容
質問主意書では2つの問いが投げかけられた。
問一:赤い羽根共同募金の配分先に「クルド人支援のための活動拠点立ち上げ事業」が含まれていることは、社会福祉法第117条第1項の「社会福祉を目的とする事業を経営する者以外の者に配分してはならない」という規定に違反すると考えるか、政府の見解を示されたい。
問二:寄付者である国民がその配分先について疑義を抱いた場合、共同募金会には疑義を払拭するための説明責任があると考えるか、政府の見解を示されたい。
浜田議員は後に自身のSNSで「基本的にまともな答弁は返ってこないと予想していたが、国会の記録に残すという意味で提出した」と述べている。
岸田内閣の答弁——実質「ノーコメント」
2023年11月28日付の答弁書(内閣参質二一二第五〇号)の内容を整理する。
「共同募金事業については……各都道府県の共同募金会が……自主的かつ自律的に行うことを基本としており、寄附金の配分については、同法第117条第4項において『国及び地方公共団体は、寄附金の配分について干渉してはならない』と規定されているとおりである。また、共同募金会が行う共同募金事業が同法の規定に違反していることが明らかな場合において、当該共同募金会の設立の認可を行った都道府県知事等がどのような対応を行うかについては……個々の状況に応じて、当該都道府県知事等において個別に判断されるものである」——違法かどうかの判断を示さず、都道府県に丸投げ
「配分を受けた者における個別の事情が生じた場合においてどのような情報を公開するかについては、個々の状況に応じて、共同募金会において個別に判断されるものである」——説明責任の有無すら答えず
浜田議員が予想した通り、政府は違法性の判断を一切示さなかった。1つ目の答弁は「寄附金の配分に国・地方公共団体は干渉してはならない」という117条4項を根拠に、判断を都道府県知事に委ねる形を取っている。「都道府県知事が個別に判断」「共同募金会が個別に判断」という答弁は、実質的に「政府は関与しない」というノーコメントだ。
「社会福祉事業」の解釈問題——どちらの立場も成立しうる
クルド人支援への助成が社会福祉法117条に違反するかどうかは、「社会福祉を目的とする事業」の解釈による。
違反しないとする立場 赤い羽根・共同募金会側の立場は「外国人支援・多文化共生事業も社会的弱者支援として社会福祉の範疇に含まれる」というものだ。クルド人を含む在留外国人は、言語の壁・文化の違い・制度へのアクセス困難などの問題を抱えており、こうした人々を支援する活動は広義の社会福祉に含まれるという解釈だ。
問題があるとする立場 浜田議員側の立場は「社会福祉法第2条が列挙する社会福祉事業の類型に、特定民族への支援や在留資格を持たない仮放免者への支援は含まれていない」というものだ。特にNPO法人メタノイアが対象とする「仮放免中のクルド人」は正規の在留資格を持たない。仮放免者は社会保障制度の対象外であり、こうした人々への支援が「社会福祉事業」に当たるかは法的に見解が分かれる余地がある。
政府は両者の解釈のどちらが正しいかを示す義務があったが、答弁書ではその判断を回避した。
解釈の対立が残されたままの助成
- 社会福祉法第117条は「共同募金は社会福祉を目的とする事業を経営する者以外の者に配分してはならない」と定めている
- 2023年11月、浜田聡参議院議員がクルド人支援への助成は同条違反ではないかと質問主意書(第212回国会第50号)を提出
- 岸田内閣の答弁書は違法性の判断を示さず、117条4項の「国・地方公共団体の不干渉規定」を根拠に「都道府県知事が個別に判断」と回避した
- 「社会福祉を目的とする事業」にクルド人支援が含まれるかは解釈が分かれており、政府も明確な見解を示していない
- 国会の場で問題提起されたにもかかわらず、判断が示されないまま助成は継続されている

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